ねじ部品は、機械要素の中で最も破損しやすい部品の一つです。これは、ねじ溝による切り欠きが大きく、応力が集中しやすいためです。ねじの強度を高めるためには、ねじ底のR(谷底R)を適切に設定することが重要です。谷底Rが大きいほど、ねじ部の疲労強度が向上します。以下では、ねじの谷底Rに関する詳細な情報を解説します。
1. 基本的な谷底Rの設定
JIS B0215では、谷底Rをねじピッチ(P)の0.1P以上と規定しています。しかし、実際の加工では0.1Pから0.14Pの範囲でバラツキが生じます。谷底Rを指示しない場合、0.1Pで加工されることが多く、これにより切欠き係数が高くなり、強度的に不利になることがあります。
- 応力の高い重要部品の場合: ねじ底Rは0.14Pを指示してください。
- 例: M62×2 の場合、ねじ底 Rは 0.28
2. 特殊な谷底Rの設定
ねじ部品にかかる応力が高く、標準の許容応力を超える場合や、材質や呼び径を変更できない場合には、谷底Rを大きくする方法があります。JIS B0215の基準より大きく(0.18R)することで、切欠き係数を低減し、疲労強度(許容応力)を高めることが可能です。ただし、専用のバイトが必要になるなどの問題もあります。
- 特殊谷底Rねじを使用する場合: 谷底Rは0.18Pを指示してください。
- 例: M64S×3 の場合、ねじ底 Rは 0.54
- 注: ねじ呼び径の表示は「M64S×3」のように「M64」の後に「S」を入れる。
実績と注意点
- 標準谷底(0.14P): なるべく標準谷底を使用してください。呼び径や材質の変更ができない場合にのみ、特殊谷底Rを採用します。
- 実績例: 特殊谷底Rは、M機やMA機で実績があります。米国規格MIL-S-8879では、谷底Rを大きくした修正山形のねじが航空機エンジンに多く使用されており、疲労破損に対する信頼度が約2割向上するとの報告があります。
許容応力の向上
実際の許容応力の向上は、ねじ底Rの加工精度にバラツキがあるため、約5%と考えてください。
ねじの谷底Rを適切に設定することで、ねじ部品の疲労強度を大幅に向上させることが可能です。設計時には、ねじの使用条件や応力状態に応じて、谷底Rを適切に選定し、指示することが重要です。製造現場では、これらのガイドラインを遵守し、品質管理を徹底することで、高い信頼性と耐久性を持つ部品を提供することが求められます。
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