ねじは、機械要素の中で重要な部品ですが、その特性上、締付応力や使用応力が降伏点以下で使用されることが多いです。しかし、ねじの破損の多くは疲労破損に起因します。以下に、ねじの理論許容応力と疲労安全率について詳しく解説します。
1. ねじの疲労破損の原因
ねじは、締付応力や使用応力が降伏点以下で使用される場合が多く、その破損のほとんどが疲労破損となります。
2. ねじが締まっている場合の許容応力
1) ねじ締付時の応力振幅
全振幅σzは、応力振幅σwk×2に等しく、計算荷重応力σに内外力比Φfを掛けた値です。
内外力比Φfは、ボルト締付時に荷重がかかった場合にボルトに付加される荷重比です。内外力比は、締付物の材質や形状によって変わりますが、材質が鋼の場合は最大0.33、鋳物の場合は最大0.47となります。
例: 内外力比Φf = 0.33 (鋼)
全振幅σzは、ボルトの疲労限度σbwk×2より小さくなければなりません。
2) 例: M12 ボルトの最大計算荷重応力σmax 及び疲労安全率S1
締付物が鋼の場合、ボルトが締まっている場合の許容応力σal=14kgf/mm²
全振幅σz<6.7×2=13.4kgf/mm²(互省のカタログ P50を参照)
理論許容応力σmax=全振幅σz/内外力比Φf=13.4/0.33=40.6kgf/mm²
疲労安全率S1=最大計算荷重応力σmax/設計許容応力σal=40.6/14=2.9
※ねじは、多数個使用する場合がほとんどで、締付力のバラツキ(±20%程度)があるため、均一な応力にならず、内外力比Φfの不確実さ、曲げ応力が付加される場合もあり、安全率は2.5程度が必要です(実績値)。
参考: 引張強さとの安全率(引張強さσβ=124kgf/mm²)
引張強さとの安全率S11=124/14=8.86
3. ねじが緩んだ場合の許容応力
1) ねじが緩んだ時の応力振幅
全振幅σzは、最大計算荷重応力σmaxがボルトの疲労限度σbwk×2より小さくなるように設計します。
2) 例: M12 ボルトの最大計算荷重応力σmax 及び疲労安全率S2(締付物が鋼の場合)
ボルトが緩んでいる場合の許容応力σal=7.1kgf/mm²
理論許容応力(全振幅)σz=最大計算荷重応力σmax<6.7×2=13.4kgf/mm²
疲労安全率S2=最大計算荷重応力σmax/設計許容応力σal=13.4/7.1=1.89
※ねじは、多数個使用する場合がほとんどで、ねじが緩むと均一な応力にならず、部分的に大きな応力がかかるため、疲労安全率は1.5程度が必要です(実績値)。
参考: 引張強さとの安全率(引張強さσβ=124kgf/mm²)
引張強さとの安全率S22=124/7.1=17.5
参考事項
- ねじの締付応力=降伏点の約60%
- 締付トルク・締付力は±15%程度のバラツキがあります。
ねじ部の理論許容応力と疲労安全率は、機械設計において非常に重要です。適切な設計と管理を行うことで、ねじ部の信頼性と耐久性を向上させることができます。製造現場では、これらの基準を遵守し、品質管理を徹底することが求められます。
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