ソケットボルトは機械要素の中でも特に破損しやすい部品の一つです。ねじ溝による切欠きが大きく、応力が集中しやすいため、破損を防ぐためには適切な締付が重要です。ここでは、ソケットボルトの許容応力を締付状態に応じてどのように設定するかを詳しく解説します。
1. 締付の重要性
ねじ部品は、しっかりと締付けることで応力振幅を小さくし、破損を防ぐことができます。しかし、ボルトの使用場所によっては締めにくい部分も存在し、この場合は振幅が大きくなり、許容応力を低く設定する必要があります。完全締付と不完全締付では許容応力が異なるため、適切な設定が求められます。
2. ソケットボルトの一般許容応力
ソケットボルトの許容応力は、強度区分10.9および12.9に基づいて設定されます。以下は許容応力の目安です。
呼び径 | 完全締付状態 | 不完全締付状態 | ゆるんだ状態 |
---|---|---|---|
M4~M20 | 1400 kgf/cm² | 1020 kgf/cm² | 710 kgf/cm² |
M24~M33 | 1200 kgf/cm² | 870 kgf/cm² | 610 kgf/cm² |
M36~M52 | 1150 kgf/cm² | 820 kgf/cm² | 570 kgf/cm² |
1) 一般許容応力の設定
- **完全締付状態(締め易い場所)**の場合、許容応力σal 1200 kgf/cm²
- **不完全締付状態(締めにくい場所)**の場合、許容応力σal 870 kgf/cm²
- **ゆるんだ状態(ゆるむ状況の場所)**の場合、許容応力σal 610 kgf/cm²
注:ボルトの呼び径によって許容応力は変わります。径が大きくなると切欠係数が高くなり、許容応力が低くなります。径が小さくなると許容応力は高くなります。強度は一般許容応力で設計し、M36以上では許容応力を少し下げます(1150 kgf/cm²)。
2) 締付状態の詳細
- 完全締付状態(締め易い場所)の場合:締付力(確実)、内力係数0.5
- 不完全締付状態(締めにくい場所)の場合:締付力(不確実)、内力係数0.7(締付にばらつきがあるため、①と③の中間値)
- ゆるんだ状態の場合:締付力=0(不確実)、内力係数1.0(全振幅荷重を受ける)
3) 疲れ限度について
締付力が0の場合、ボルトは疲れ限度で破損します。ねじ呼び径別の疲れ限度を参照してください。応力振幅が0から始まる場合、許容応力は疲れ限度の2倍となります。
例)呼びM12のソケットボルトの締付力=0の場合の許容応力: σal=665×2=1330kgf/cm2σal = 665 \times 2 = 1330 kgf/cm²σal=665×2=1330kgf/cm2 多数個ある場合は締付けのアンバランス0.7を考慮して許容応力は: σal=1330×0.7=930kgf/cm2σal = 1330 \times 0.7 = 930 kgf/cm²σal=1330×0.7=930kgf/cm2
ソケットボルトの許容応力は、締付状態に応じて適切に設定することが重要です。これにより、機械要素の信頼性と耐久性を確保することができます。設計および製造現場では、これらの基準を遵守し、品質管理を徹底することが求められます。
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