S45Cは機械構造用炭素鋼の一種であり、その調質(焼入焼戻し)によって硬度と強度を調整することができます。以下に、S45Cの調質についての詳細な説明と指定硬度の基準を示します。
1. 引張強さと硬度の関係
鋼の引張強さと硬度はほぼ比例し、一般的には硬度が高いほど引張強さも高くなり、強度がアップします。
2. 材質による焼きの入りやすさ
材質によって、焼きがよく入る材料と入りにくい材料があり、S45Cは調質有効直径が小さく、焼きが入りにくい特徴があります。以下は調質有効直径の例です:
材質 | 調質有効直径(mm) |
---|---|
S45C | 約15 |
SCM440 | 35~85 |
SNCM439 | 85~150 |
3. 調質における焼入硬度の重要性
調質の際、焼入れした時の硬度が重要で、組織がマルテンサイトになっていることが求められます。ハーフマルテン以上の組織が望ましいとされています。
- 焼入最高硬さ HRC = 30 + 50 × C% = 30 + 50 × 0.45 = 52.5
- 焼入臨界硬さ HRC = 24 + 40 × C% = 24 + 40 × 0.45 = 42
4. S45Cの焼入臨界硬さと対応直径
S45Cの焼入臨界硬さ(HRC=42以上)が確保できる直径は、水焼入で直径13mm程度です。
直径(mm) | 表面硬度(HRC) | 内部硬度(HRC) |
---|---|---|
13 | 59 | 52 |
25 | 58 | 35 |
50 | 42 | 29 |
75 | 35 | 23 |
100 | 30 | 20 |
125 | 24 | 19 |
5. 調質(焼入・焼戻し)の重要性
調質は、焼入後に十分な焼戻しを行うことで鋼が粘り強くなります。S45Cに規定の焼戻しを行うと、内部硬度は上記表から3~10ポイント下がり、最終的にはHRC20±3となります。
- S45Cは直径が大きくなると、焼入硬度が大きく下がります。
- 直径φ20以下で水焼入の場合には、HRC28±2でも適用できることがありますが、一般的には油焼入ではこの硬度は確保できません。
S45Cの基準調質硬度
S45Cの基準調質硬度はHRC20±3とします。
注意点
- 調質硬度を高く設定すると、焼入硬度が低いため、焼戻し温度を極端に低く設定しないと指定硬度が確保できません。しかし、焼戻し効果がほとんどない熱処理になり、衝撃値が下がり(50J/cm²・2mmUノッチ以下)、荷重がかかった時に微小クラックが入り破損する可能性があります。実際には、標準的な焼戻しを行うため、硬度はHRC20程度になります。
- 調質(焼入・焼戻し)硬度がHRC28程度必要な場合は、SCM440相当(ATM100も含む)の材質を使用します。
S45Cの調質は、その特性を最大限に引き出し、適切な強度と硬度を確保するために重要です。適切な焼入と焼戻しを行うことで、S45Cの性能を最大限に発揮させることができます。
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