機械加工と IT 基本公差

機械加工

機械加工において、基本公差はすべての加工の基礎となる重要な要素です。以下に、機械加工における基本公差について詳しく解説します。

IT基本公差は、はめあい部品 (穴と軸、キーとキー溝など)について、長さのサイズに対して許容されるサイズ公差を定めたISOのコード方式に属する公差で、JIS内でも様々な規格の中で登場します。JISでは3150mm以下の寸法を区分して、寸法数字の区分ごとにIT基本公差に基づく公差を、IT1からIT18まで付与しています。一般的な穴と軸のはめ合いに用いられるのがIT5~IT10です。

1. 基本公差の重要性

基本公差はすべての機械加工の基本となるものであり、加工の精度や品質を左右します。

2. 通常の機械加工限度

恒温加工室のない通常の機械加工限度は、ほぼ6級公差となります。5級以上の公差を指定しても、加工が困難な場合が多いです。

3. 一般的な加工公差

一般的な加工公差は7級以下とし、6級以上はなるべく指定しないことが推奨されます。これにより、加工時間を短縮しコストダウンを図ることができます。6級公差は、7級に比べ加工時間が1.0~1.5倍増加し、コストアップにつながります。

4. 幾何公差の加工限度

幾何公差の加工限度は、6級相当とします。細かい寸法範囲を必要とする場合、この表の6級公差範囲を指定します。

例: 基準寸法230 ⊥ 0.01 A → ⊥ 0.03 A (6級相当)

5. ピッチ寸法公差の加工限度

ピッチ寸法公差の加工限度も、6級相当とします。

例:

  • 呼び長さ100mmの場合:6級公差 0.022 ±0.01
  • 呼び長さ700mmの場合:6級公差 0.050 ±0.03

6. 硬質クロームメッキ後のバフ加工限度

硬質クロームメッキ後のバフ加工の加工限度は6級公差にメッキ厚さのバラツキ±0.005(直径で0.020)を加えます。

  • 長さ1m以内 公差7級
  • 長さ2m以内 公差8級
  • 長さ2m以上 公差9級

7. ガス窒化及びタフナイト処理後の公差

ガス窒化及びタフナイト処理で最終研磨加工をしない場合、加工限度公差6級に寸法バラツキを加えた公差とします。

  • 単純形状 公差7級
  • 複雑形状 公差8級

注意点

通常の機械加工(幾何公差・ピッチ寸法公差を含む)の限度はほぼ6級公差となります。5級以上の公差を指定する場合、恒温室での加工など特別な環境が必要となる場合が多いです。

基本公差の範囲表

以下は各等級の基本公差の範囲を示した表です。単位はμ(0.001mm)です。

等級IT 5IT 6IT 7IT 8IT 9幾何公差ピッチ寸法公差
6 – 10691522360.01±0.01
10 – 188111827430.02±0.02
18 – 309132133520.03±0.02
30 – 5011162539620.05±0.03
50 – 8013193046740.07±0.04
80 – 12015223554870.11±0.05
120 – 180182540631000.13±0.07
180 – 250202946721150.13±0.07
250 – 31523325281130
315 – 40025365789140
400 – 50027406397155
500 – 6004470110175
630 – 8005080125200
800 – 10005690140230
1000 – 125066105165260
1250 – 160078125195310
1600 – 200092150230370
2000 – 2500110175280440
2500 – 3150135210330540

基本公差は機械加工において重要な要素であり、適切な等級の選定と管理が必要です。これにより、加工の精度を高め、コスト効率を向上させることができます。製造現場では、これらの基準を遵守し、品質管理を徹底することが求められます。

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