熱処理(焼入れ・焼戻し)可能な炭素含有量の目安
熱処理硬度は目安値を示します。焼入れ可能判定は、炭素含有量(炭素当量)によります。
炭素含有量の目安
- 熱処理可能(溶接難)炭素含有量
- 炭素含有量0.4%以上
- 材料例:S45C、S55C、SCM435、SCM440、SACM645
- 溶接可能(熱処理不可)炭素含有量(浸炭焼入用)
- 炭素含有量0.25%以下
- 材料例:SS400、S15C、S20C、SCM420
- 溶接割れに対する炭素当量の目安:
- 一般に溶接割れはHv<350の場合、炭素当量=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14<0.44%で発生しにくいが、これ以上の場合には予熱が必要。
焼入れ組織:ハーフマルテン硬度(50%マルテン)
調質は焼入れした時の組織がマルテンサイトになっていることが重要です。焼入臨界硬さ(ハーフマルテン硬さ)以上が良いとされています。
- S45Cの場合:
- 焼入最高硬さ HRC=30+50×C%=30+50×0.45=52.5
- 焼入臨界硬さ HRC=24+40×C%=24+40×0.45=42
焼入れした時、ハーフマルテン硬さ以上になっているか確認するとよいです。また、調質有効直径は焼入時中心部がハーフマルテン硬さ以上になる最大直径です。
熱処理の種類
- 焼ならし処理:S45C、S55C大径材
- 圧延後空冷:微細パーライト
- 非調質:非調質鋼(例:SVdT30、愛知製鋼)
- 焼ならし+析出硬化処理(炭素鋼+V、バナジウム炭化物(VC))
- 圧延後空冷:微細パーライト+析出硬化
- 調質(焼入れ・焼戻し):S45C、SCM440、SACM645
- 靭性化処理:マルテンサイト
- 焼入れ焼戻し(硬化処理):SKD61、SKD11、SKH51
- 表面硬化処理:高周波焼入、浸炭焼入、軟窒化、ガス窒化
- 析出硬化処理:SUS630(Cuの析出)
熱処理と硬度
材質 | 熱処理硬度 | 深さ |
---|---|---|
1. 焼ならし | ||
S45C | HRC12~16 | 部品全体 |
S55C | HRC13~18 | 中心部は低い |
2. 調質 | ||
S45C | HRC17~23 | 部品全体 |
SCM440 | HRC24~30 | 部品全体 |
SACM645 | HRC26~30 | 中心部は低い |
3. 高周波焼入れ・焼戻し | ||
S45C | HRC47~53 | 0.5~1.0 |
SCM440 | HRC49~56 | |
4. 焼入れ焼戻し | 部品全体 | |
SKD61 | HRC48~52 | 部品全体 |
SKD11 | HRC56~60 | 部品全体 |
SKH51 | HRC60~64 | 部品全体 |
5. 浸炭焼入れ・焼戻し | SCM420 | HRC58~61 |
6. ガス軟窒化(タフナイト) | SACM645 | Hv1000 |
SKD61 | Hv1000 | 5~20μ |
SCM440 | Hv600 | |
S45C | Hv500 | |
SS400 | Hv350 | |
7. 塩浴窒化(タフトライド) | SUS630 | Hv1000 |
8. 析出硬化 | SUS630 | HRC35~40 |
9. ガス窒化 | SACM645 | Hv1000(0.3mmHv600) |
SKD61 | Hv1000 |
この表を参考にして、適切な熱処理方法と硬度を設定し、材料の特性を最大限に引き出しましょう。
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