基本熱処理(部品全体の処理)
- 焼入れ
鋼をオーステナイト化したのち急冷し、オーステナイトの一部または全部をマルテンサイトに変態硬化させること。 - 焼なまし
鋼をオーステナイト化したのち変態温度範囲を徐々に冷却し軟化させること。 - 焼ならし
鋼の組織を常態化するため、変態点以上適当な温度に加熱した後静かな大気中で冷却する操作。 - 焼もどし
焼入硬化した鋼や鋳鉄を適当な温度に保持したのち適当な速度で冷却し靭性を与える熱処理。 - 析出硬化
過飽和固容体を適温に加熱するとき、ある組織成分が析出することによって起こる硬化をいう。
表面硬化
- 火炎焼入れ・焼戻し
酸素・アセチレン炎などを用いて急速加熱後直ちに注水するか、その他の冷却により任意の表層の焼入れ硬化を行うことをいう。また、焼入れされた部品を粘くするため低温焼戻し実施。(150~200℃) - 高周波焼入れ・焼戻し
高周波電流を利用して表面を加熱焼入れする方法をいう。また、残留応力のバラツキ低減のため低温焼戻しを実施。(≒200℃) - 浸炭焼入・焼戻し(はだ焼き)
はだ焼きとは鋼の表面部を硬化するため、浸炭した後適当な熱処理を施す操作をいう。また、焼入れされた部品を粘くするため低温焼戻し実施。(150~200℃) - 窒化
520℃近傍の例えば70%NH3+30%H2混合ガスの中で鋼の表面に窒素を浸透させ、硬い硬化層を得る方法をいう。 - ガス軟窒化
570℃近傍の例えばRXガス+NH3混合ガスの中で鋼の表面に窒素を浸透させ、硬い硬化層を得る方法をいう。窒化鋼以外にも用いられタフナイトとも呼ばれる。SUS系は温度上昇中に酸化皮膜が形成され処理がうまくできないので不可。 - 塩浴窒化
520~570℃の低温の塩浴で窒化する方法をいう。得られる硬さは普通の窒化より低いが疲労強度と耐摩耗性がます。窒化鋼以外にも用いられタフトライドとも呼ばれる。SUS系でも処理可。
熱処理組織
- マルテンサイト
オーステナイトを急冷した場合に、Ms点以下の温度で変態して生ずる焼入れ組織の一つで、顕微鏡では一般的に針状を呈する。 - ベーナイト
ベーナイトとは炭素鋼または合金鋼を焼入れ温度から150~500℃の熱浴に焼入れて恒温変態を起こさせたときに生ずる組織をいう。顕微鏡で見ると特長ある羽根状、または針状を呈する。 - ソルバイト
完全焼入状態であるマルテンサイトを焼戻しした時の組織で、フェライトとセメンタイトの微細な混合組織となる。 - パーライト
焼なまし又は大径材で焼が入りにくい場合に生ずる組織でフェライトとセメンタイトの層状組織となる。
その他
- 不完全焼入れ
鋼材の芯部までマルテンサイト組織にならず、フェライト、ベイナイト、パーライトなどの組織が混在するような焼入れを不完全焼入れという。 - 焼割れ
焼入れの際に発生する割れで急冷による熱ひずみと変態ひずみの2種類あるが、大部分は、オーステナイトからマルテンサイトに変態する時の異常膨張によるものである。
これらの基本用語を理解することで、適切な熱処理方法を選択し、材料の特性を最大限に引き出すことができます。
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