繰返し回数が少ない機械の許容応力は、繰返し回数に応じて設定される必要があります。以下に、許容応力の設定方法と考え方を詳しく解説します。
1. 一般的な許容応力設定
機械の繰返し許容応力は、通常、繰返し回数が106~107回(100~1000万回)以上にも耐えられるように設定されます。
- 許容応力の計算には、切欠係数と疲労強度が必要ですが、これらは正確には求められないため概略計算で求めます。
- 文献や技術資料から推定値を使用して計算します。
2. 疲労強度の影響
疲労強度は、繰返し回数が106~107回(100~1000万回)以上の場合の数値を基準としています。繰返し回数が少ない場合には、疲労線図(SN曲線)から概算値を求めます。
多くの疲労線図(SN曲線)より、104回の疲労強度は106~107回の疲労強度の約1.35倍程度であることがわかっています。
例: S45C 焼入焼戻し 両振り引張圧縮疲労強度の例
- 106~107回:23~36 kgf/cm²
- 105回:30~43.8 kgf/mm²
- 104回:35.5~49.8 kgf/mm²
3. 疲労強度倍率の設定
疲労線図(SN曲線)を基に、繰返し回数ごとの疲労強度倍率を設定します。
S45C 焼入焼戻し 両振り引張圧縮疲労強度倍率
繰返し回数 | 疲労強度範囲 | 疲労強度倍率(下限) |
---|---|---|
104回 | 1.38~1.54倍 | 約1.35倍 |
105回 | 1.22~1.30倍 | 約1.25倍 |
106~107回 | 1.0とする | 1.0とする(一般許容応力) |
S45C 焼入焼戻し 両振りねじり疲労強度倍率
繰返し回数 | 疲労強度範囲 | 疲労強度倍率(下限) |
---|---|---|
104回 | 1.32~1.49倍 | 約1.35倍 |
105回 | 1.23~1.37倍 | 約1.25倍 |
106~107回 | 1.0とする | 1.0とする(一般許容応力) |
ねずみ鋳鉄 回転曲げ疲労強度倍率
繰返し回数 | 疲労強度範囲 | 疲労強度倍率(下限) |
---|---|---|
104回 | 1.53~1.90倍 | 約1.55倍 |
105回 | 1.33~1.43倍 | 約1.35倍 |
106~107回 | 1.0とする | 1.0とする(一般許容応力) |
4. 鋼の疲労強度と荷重の種類
鋼の疲労強度は、疲労線図に基づき、繰返し回数が少ない場合に高くなります。荷重の種類(引張圧縮、回転曲げ、両振りねじり)による疲労強度のアップ率は若干異なりますが、ほぼ同一と考えられます。
5. 許容応力倍率の目安
繰返し回数が少ない場合の許容応力(疲労強度)倍率は、次のように設定します。
繰返し回数 | 許容応力倍率 |
---|---|
104回 | 約1.25倍 |
105回 | 約1.2倍 |
106~107回 | 1.0とする(一般許容応力) |
- 繰返し回数が105回以内の場合の許容応力は、一般許容応力の1.2倍程度高く設定しても良いですが、過大圧力などピーク応力の可能性を十分に調査する必要があります。
- 繰返し回数が105回を大きく超える場合は、一般許容応力で設計する方が良いです。
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